シード投資家3人が考える、バーニングニーズの見つけかた(3)——シード期ファイナンスとバーニングニーズ
バーニングニーズをテーマとした、シード投資家3人によるディスカッションの最終回です。
スタートアップがプロダクトを出す上では、プロダクトの中身もさることながら、その見せ方も重要になってきます。バーニングニーズに響く見せ方、ワーディングについて、いくつかの実例を引き合いに語っていただきました。
また、市場環境の変化とともに、バーニングニーズも変化していきます。シード投資家がスタートアップに求めるスピード感についても話を聞きました。
萩谷: LP 回してみてアドやリードをどれくらい捕まえられるかもそうだし、あとワーディングが結構重要ですよね。BtoBだと特に。どういうワードがその課題に突き刺さるのかというのが結構あると思ってて、営業資料とかもそうだと思うんですけど。
CBcloudeといううちの投資先で、ドライバーのマッチングサービスで多重構造になっているところをクラウドソーシングで直でマッチングしていくという。「緊急配送」っていうワードが結構刺さったんですよね。緊急なものがあったらうちで運び入れますと。
物流の業界時間内に運び切らなくちゃいけないという強いプレッシャーがあるので、荷主に刺さりました。プロダクト自体を本当に荒いもので、マッチング自体もアナログでやってましたが、ニーズあるんで。
CBcloud のサービス「PickGo」
北尾:ワーディングは重要だなあ。サービスを相手に対して引きを感じさせるワーディングとか、説明としてイメージ付きやすいワーディングとか、スタートアップは常に新しいサービスを作ってるから、相手からしたらわかってるようでイメージがついてない。
でも、多分フロントに立ってる人は分かったふりをして断ってしまう。起業家も何が原因かわからない。結構実はその原因にワーディングをもっと工夫すればよかったんじゃないかってなんかある気がしてますね。
萩谷:うちの投資先で Tsunagu.AI というローコードのサービスで、デザインのデータさえ上げれば、自動でフロントエンドのコードが自動化されるというソリューションがあるんですけど、最初は幅広くウェブ制作で使えますという感じでやってたんですけど、今はLP 作るときに圧倒的に 50% 削減されますという尖ったワードにしたら、分かりやすくてリード数が伸びたりとか。ペルソナをどこまで絞り込むのかは初期で重要かもしれないですね。
Tsunagi.ai が提供する「FRONT-END.AI」
北尾:BtoBのサービスとか、BtoC でも事業者に対してでBtoBに近いCとかでも、そういう人たちは普段経済活動をしてるから、合理的に意識決定していると思うので、企業だと「売上が何 % アップします」と言えば、セールスサービスやセールステックを売りやすくなるだろうし、何 % コストがカットしますと言ったら使いやすくなるだろうし。
Notionや他のサービスも「こうした業務が何 % 変わった」とかいうのを人の口コミで「めちゃめちゃ良くなったよ」と聞くと、「俺もNotionにしてみようかな」とか。分かりやすく良い事例が出てくると、さらにバーニングニーズを持ってなかった人が自分の課題に気付いて、そのサービスを加速度的に使い出すようになって、企業がまたグッと伸びるのは結構感じます。
木暮:BtoB の会社は合理性の部分があると思うし、予算取り、お金をどこから引っ張ってくるかも結構ワーディングとか営業スタイルで変わってくるなと思っていて。この部署は予算が無いけど、隣の部署はそこにかけられる予算が有るケースがあります。セールスとか法務とか HR とか全部が繋がっているわけじゃないと思いますが、結構ワードとか営業で変わるのかなと思います。
北尾:ワーディングを営業資料やペライチにちゃんと入れておくかだけで受注率がちょっと変わったりとかもするだろうし。
木暮:ワーディングは PDCA が回しづらいところだと思っていて、とにかくもうそのなんか種類を全部先に変えるところもあるんですよね。うちの投資先だとシンプルにもベタつく人がいて、ピボットの形でバーニングニーズを引くこともありますし、ナイスなワードを彼と2人で考えました、みたいなのもあって。自分の応援団を社外や営業先に持てるかは大事かもしれません。
サービスによってはその人がプロモーターになるかもしれませんし、 1 ID の課金とかでも他の部署に宣伝してくれて増え続けるケースもあるかと思うので。
北尾:ワーディングで思い出したエピソードがあって、顧客だけじゃなくて投資家とか IR とか HR にもすごく利くなと思っていて、マクアケが上場する、目指すタイミングで、規模もある程度あってクラウドファンディング業界ではがナンバーワンと取った時に、クラウドファンディングというマーケット自体はざっくり日本で100億ぐらいすしかないと。
どうIPOに向けてのロードショーを機関投資家に対して回っても、100億だとイメージがつかないと。入りたいと思わない。で言ったのはもうクラウドファンディングという言葉をもう絶対使わないということを藤田社長やいろんな人からアドバイスもらって、変わりに何かというと、ソニーが PlayStation を作り出して任天堂が64を作り出したように、ここから世界的な新商品が生まれるエンジンです、プラットフォームですというと、それは100億とかそんな話じゃなくて、PlayStation の64はと数千億円を頂き出している大ヒット商品であって、やっぱり言葉を変えたことで、だいぶイメージが変わった。
そこもワーディングのセンスだなと思い出しました。
萩谷:身近なとこで今思ったのは Meety のカジュアル面談だとか結構ワーディングだなと思ったりしますね。潜在的にみんな思ってるところに対して、美しいソリューションという感じですよね。それが網羅されてるワードなので、みんな受け入れられて広がっていきましたよね。
北尾:良い言葉ですよね。ちゃんと言葉にして一気にイメージがついた感じがします。
木暮:ポジショニングも、やっぱ分かりやすくなります。ワードによって。一発でサービスの説明になるし、このサービスはどういうときに使われるのか分かりやすいですね。
北尾:ポジショニングがはっきりしてユニークだって分かると投資家もやっぱり面白いかもと思うようになるだろうし、もちろん採用でもそうだし、色々な所に活きてきますよね。
このいわゆるシードとかプレイシードのタイミングで資金調達しなくちゃいけないんだけど、そのためにまずサービスを考えたりニーズを探さなくちゃいけないというフェーズのタイミングで起業家がすべきこととか使うべき時間のところとか、これはするなとか、こういうのをもっとしていくべきだとかあれば最後に聞いてみたいです。
木暮:何で起業するかを改めて考えてほしい。それはやめろという話ではなくて、例えばめちゃくちゃお金が欲しい。社会貢献とか含めてのお金が欲して、そのための 1 番最短距離が起業だったっていう人はいるし、例えばこの課題を解決した、このマーケットで働いていて、すごいしんどかったからそれを解決したい。
各々全部理由があっていいと思うんですけど、そこに紐づいたらプロダクトも選ぶマーケットも変わってくるなと。本当に最短でお金を作りたい人からすると、そういうマーケットの選び方。どのマーケットでそれをゴールにしてやってこうとする人たちも全然いると思いますし、逆に働いていたマーケットを変えたい人だと、マーケットの中でプロダクトを考えるかだと思うので、結構起業はテーマを悩んでいる方もいるじゃないですか。そういう人は一旦なんで起業するんだっけというところを突き詰めてもらうと見つかりやすいのかなと思いましたね。
萩谷:起業して大きくして上場すると 7 年とかかかってそこからスタートみたいな感じではあるんで、課題に興味を持てるというか365日考えてることが当たり前ぐらいに思えるようなところでチャレンジした方がいいなと。
それが結構覚悟になって徹底的に調べるられるし、能動的に徹底的に近い領域とか競合とか海外ではどうゆう事例があるか調べ出して、細部に宿って、それが覚悟になって意志になって人を惹きつけていく。
そういうところ見つけられるのかっていうところ、そして思い込めるか、俺がこれを解決するんだみたいな。そこですよね。そういう人に惹かれるかなと思うので、焦らず何がしたいのか考えるのは重要かなと思います。
あとは検証スピード感はめちゃくちゃ重要だと思ってて、さっきの LP 出したり、とりあえず試してみるとか。スピード感が結構プレシード、シード、プレシリーズAとなっていくときに、企業の中の DNA みたいになるイメージがあって、その後もあんまり変わんないなと思ってて。スピード感が。結構決まったら意識持ってスピード感持ってやっていくみたいな。
北尾:何で起業したいんだとか、なんでこの事業なんだみたいな思考はやっぱ最初すごいちゃんとしておくと、迷った時とか立ち止まった時でも、原点回避しやすいみたいなことある気がしてて、そこから1 年 2 年 3 年走りきれるみたいなそういう意味で大事かなとおもいます。
スピードは本当に命かなと。1にも2にも3にもスピードで、伸びてる会社の社長ってレスも早ければ面談とかヒアリングのアポとか含めて全部早いなって感じで。忙しいはずなんですけど、スピードを意識してんだろうなあっていうのを感じることが多いかな。
木暮:面白いなと思った話があって、とある先輩に言われたんですけど、僕らがザッカーバーグと同じなのは時間なんですよね。ザッカーバーグは 46 時間あるわけじゃないし、お金だと全然違うじゃないですか。彼らが使えるお金は違うと思いますけど、同じ時間の密度とか手数とかいかに高めていけるかというところは意識してなきゃいけない。それがスピードに繋がるという感じがしますよね。
北尾:そこを考えたときに同じ密度でやれてるんだっていうのは認識したら、確かに時間の捉え方とかスピードの捉え方も変わるかもしれない。
木暮:人の数や社員数で打てる手は違ってくると思うんですけど、起業か 1人だけでみたら24時間で一緒。それぐらいのスピード感で進捗できているかは僕ら自身にも問われなけれないけない質問なのかなと。
萩谷:スピードって意思決定のスピードと行動だと思うんですよね。意思決定がなかなかできない人はずーっとスピードが遅いというのがあって。
意思決定が遅くていい課題と意思決定を早くしてすぐやった方がいいという2 つの事象があって、バランス良く意思決定していく。ここら辺が結構重要なんだろうなと思います。
同じ課題での投資先でも意思決定の速さは全然違っていくというか。 1 ヶ月も同じ課題で悩んでたりしてて。
北尾:この意思決定は慎重にしようとか、早くこれやった方がいいという棚卸しとか、そのものの判断自体が早い人はやっぱり違うんですかね。
萩谷:早いと思いますね。
ありがとうございます。今日はバーニングにするタイトルとそれにまつわるシード期の起業家にとって必要なことを幅広くディスカッションしました。また次回も MonthlyPitch 動画として有益な情報を出していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。