2024.02.26 Monthly Pitch

Z世代も支持、新甘味料開発「オリゼ」の秘密ーー楽天でトップセールを続ける「ある材料」とは/Monthly Pitch! アルムナイ

オリゼ代表取締役の小泉泰英さん

楽天のグラノーラランキングで常にトップを走り続けている商品があります。販売開始から約2年(※2023年11月時点)で累計100万食を販売した「ORYZAE GRANOLA(オリゼ・グラノーラ)」です。砂糖不使用、無添加、グルテンフリーのグラノーラで、現代の自然派、健康志向を求める消費者、特にZ世代からの支持を取り付けているそうです。

そしてこのORYZAE GRANOLAにはもうひとつの「秘密」が隠されています。それが今回、ご紹介するMonthly Pitchアルムナイのスタートアップ「オリゼ」の開発する、ある材料に関するものになります。

日本が誇る発酵技術

ORYZAE GRANOLA(オリゼ・グラノーラ)/写真提供:オリゼ

発酵技術から全く今までなかった新しいものを作ろうと思ったーー。

インタビューに答えてくれたのがオリゼ代表取締役で、創業者の小泉泰英さん。大学の農学部時代に発酵技術と出会い、その検討の中で生まれたのがオリゼの前身となる企業でした。

小泉さんたちが現在、挑戦している食材、それが「米麹」です。

米麹はみそやしょうゆ、日本酒などの和食文化になくてはならない存在である一方、使われ方は限定的です。せっかくなら若い世代の食のライフスタイルや日本人以外の食文化にも入っていけるものを作りたい、小泉さんは創業のきっかけをそう振り返ってくれました。

スタートアップすると決めた小泉さんはその後、大学でのビジネスコンテンストなどを経て、宇都宮大学発ベンチャーとして2018年にオリゼ(※当時の社名はアグクル)を創業。同社の看板製品となる「米麹で作った糖分」オリゼ甘味料(米麹発酵糖分)の開発に成功します。

「オリゼ甘味料は米麹、つまり、お米を麹菌で発酵させて作る天然甘味料になります。お米が本来持っている甘みを、発酵の力で最大限まで引き出しています。発酵させることで350種類以上の栄養素が含まれた甘味料になることもわかっているんです」(小泉さん)。

製品開発のきっかけになったのは数年前にあった甘酒ブームです。甘酒を複数のインフルエンサーたちが砂糖の代わりに使っているのをみた小泉さん。甘酒に含まれる米麹の甘みをもっと使いやすくできないか、そう考えて米麹を甘味料にすることを思いつきます。

なぜ誰もやらなかったのか?


ORYZAE GRANOLA(オリゼ・グラノーラ)/写真提供:オリゼ

米麹がもし砂糖の代わりになるのであれば、健康志向の消費者層に一定の支持者が現れそうです。しかし当然ながらそこには壁がありました。それが「糖度」です。一般的な甘酒程度の甘さであればバナナ程度の糖度しかなく、あくまで「補助」甘味料としてしか機能しません。

実際に甘味料として機能させるためにはメールプルシロップやハチミツなどと同等の糖度が求められます。これは通常の米麹を3倍から4倍にまで濃縮する必要があり、さらに事業化するのであれば一定量の生産ロットを確保する必要があります。

そしてもう一つの問題が「どうやって売るか」です。

当然ですが、世の中には甘味料は多種多様揃っています。人工甘味料のようにカロリーゼロを謳う製品もあり、既にその多くは商品化され、一般消費者の生活に深く馴染んでしまっています。当時の葛藤を小泉さんは次のように語ります。

「基本的にはどこのメーカーに聞いても、米麹を甘味料にする発想自体がなかったっていうふうにおっしゃられることが多いんです。ただ、できなかった背景として一番大きいのが、そういうものを作っても、何に使えばいいのかわからないというハードルです」(小泉さん)。

製造過程で確かに甘くなってきているし生産量も確保ができそう。ただ、何に使うのが一番お客さん、社会にとって意味があるのかわからないー。その試行錯誤を続ける中、小泉さんはある食品と出会います。それがグラノーラでした。

「グラノーラってオートミールという穀物に、砂糖や蜂蜜、メープルシロップの甘さを絡めて焼き上げたものなんです。朝食などに食べるものなんですけど、当時、多くの製品が砂糖を使っていて、オートミールという穀物自体はダイエットにいいけど、そもそも砂糖を使っちゃってるから罪悪感があって食べてない、という意見があったんです」(小泉さん)。

現在の甘味に満足できていないという消費者のニーズを感じ取った小泉さんたちは、早速、オリゼ甘味料を使った100%砂糖不使用のグラノーラの開発に着手します。2021年10月にデビューしたグラノーラは当時、コロナ禍で大きく変化した社会のニーズともフィットし、一気に販売数を伸ばしていきます。

オリゼの提供するグラノーラは一般的なメーカー製品に比較して倍以上の価格帯が設定されています。にもかかわらず一定の支持を受けているのは罪悪感なく食事として続けられる点があるそうです。小泉さんのお話によれば、自分や家族の健康を考えて継続して購入する世代もあれば、Z世代のような若い層についても、友人へのギフトとしての用途で購入される方もいらっしゃるのだとか。

甘味料としては「みたらし団子」のようなやわらかい甘さを持つ甘味料ですが、もちろんグラノーラ以外へも利用が可能です。現在、小泉さんは大手食品メーカーなどと協業の可能性について話を進めているそうです。

「当社の技術的な強みはやはり、お米だったり穀物から麹菌を使って、ある程度の価格で大量に作るというところが、今後の強みになってくると思っています。中でも甘味料はもちろん直接パンに塗るなどのハチミツ的な使い方もできますし、料理の砂糖の代わりとして使っていく未来もあります。

例えばホイップクリームに砂糖の代わりに使ってみたり、あんこも作ることができます。ケチャップやドレッシングなど調味料に使われる砂糖の代替としても使えます。技術的に味わいの面でうまく仕上げられないものもありますが、あらゆる可能性について開発を進めているところです」(小泉さん)。

甘味料を使う食品はごまんとあります。小泉さんの語るように、アレルギーで特定の食品を口にできない人や、ビーガンの方々のように「食のダイバーシティ」も広がりを続けています。特に飲料やお菓子については食べ過ぎ・飲み過ぎによる肥満など健康的な課題解決の糸口にもなりそうです。

ちなみに小泉さんに気になる価格についてお聞きしたところ、グラノーラについてはブランドとして現在の価格帯を設定しているものの、オリゼ甘味料については今後、より安定した供給と経済的な合理性を感じられる価格帯にするための生産体制を目指しているとのことでした。

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