2024.05.09 Monthly Pitch

就活プラットフォーム「BaseMe」が目指す〝次世代LinkedIn〟への道/Monthly Pitch! アルムナイ

アレスグッド 創業者兼CEO 勝見仁泰氏

「MonthlyPitch アルムナイ」では、これまでにMonthlyPitch にピッチ登壇し、それを機に成長・発展したスタートアップの最新の動向をお伝えします。

アレスグッドの創業者でCEOの勝見仁泰(かつみ・きみひろ)氏に、就活支援サービス「エシカル就活(ETHICAL SHUKATSU)」についてMonthlyPitchでピッチいただいたのは2022年3月のことです。その後、サービスは「BaseMe」と名前を変え、2022年7月にはシードラウンドで1.2億円を調達しました。勝見氏に、2年前のピッチから、現在に至るまでの同社の軌跡と、今後の展開について伺いました。

ビジネスモデルの転機となった資金調達

当時のアレスグッドのプレスリリースから

主に就活で課題を抱える学生層をターゲットに、キャリア支援のデジタルプラットフォームとして展開していた同社ですが、当初は資金調達を視野には入れていませんでした。勝見氏によれば、当時は静かにプロダクトの開発・改良を重ねながら、着実にユーザ層を広げていく計画だったと言います。

「当時はサービスの軌道に乗れそうだったので、調達を考える必要がありませんでした。しかし、VC の方々と話を重ねるうちに、調達によってビジネススピードを上げられるという選択肢を知りました。」(勝見さん)

しかし、2022年7月に大きな決断がなされます。アレスグッドは、サイバーエージェント・キャピタルをリードとして、East Ventures、丸井グループ、Value Create、それにデットで、1.2億円の資金を調達したのです。この調達を機に、勢いに乗ってビジネススピードを上げることができました。

「当時から山には登っていたんですが、VCの方々から『こういう登り方もあるよ』と助言されました。資金調達できたことで、プロダクトを磨く以外にも、ブランディングやマーケティングにもリソースを注ぐことができるようになりました。
ユーザ企業が増えると、他の大手企業からも『あの会社が使っているから』といった引き合いが自然と来るようになりました。評判の口コミが一気に広がったんですね。」(勝見さん)

その結果、導入企業数は現在100社を超える規模に達しています。就活の主要ステークホルダーである学生・企業双方の支持を得ながら、2022年2月に「BaseMe」と名前を変えました。リブランディングは、事業の広がりと浸透を象徴する出来事だったと言えます。

授業を通じて学生にアプローチ

Image credit: Pixabay

ユーザ開拓において、アレスグッドが注力しているのが大学との連携です。しかもそれは、大学の就職課を経由するのではなく、直接教授に連絡をとるというものです。このユニークな戦略には理由があります。

「教授の授業を活用できれば、興味のある学生に直接リーチできます。例えばAIに興味がある層を集めたい場合は、AI分野の授業を担当する教授にコンタクトをとるんです。

 多くの大学では、教授のメールアドレスは公開情報です。最初はコールドメールからスタートしますが、一度学生に支持されれば、授業の一環として継続的に活用してもらえる可能性が高まります。

 学生の皆さんがBaseMeに興味を持ってくれれば、結果として企業にもメリットがありますし、教授の理解も得やすくなります。」(勝見さん)

既に数十人の学生がBaseMe経由で企業への内定を獲得しており、採用企業の9割以上がBaseMeを継続して利用しています。一方で課題もあります。サービスの幅が広がれば他社との差別化が難しくなる可能性もありますし、どの時点でBaseMeを想起してもらえるかが重要になってくるからです。

「かつては就活に役立つサービスという認知を狙って『エシカル就活』としていました。しかし今は、学生一人ひとりの価値観に合わせて想起されるサービスでなければなりません。そうした変化の中で、名称を『BaseMe』に変更したのも一つの戦略です。(勝見さん)

〝次世代LinkedIn〟を目指して

勝見氏の狙いは、将来的に〝次世代のLinkedIn〟と見なされるプラットフォームへの成長です。現在のLInkedInは世界でユーザ10億人を抱え、年間売上高3兆円を計上するビジネスSNSサービスですが、アレスグッドはそれを超えることをマイルストーンの一つに位置づけています。

「LinkedInはビジネスSNSとしての側面が強いプラットフォームです。私たちが目指すのは、キャリア支援から採用、人材マネジメントに至るまで、あらゆる課題を一気通貫で解決できるソリューションです。」(勝見さん)

アレスグッドは、日本国内での事業基盤は構築できたと考え、今後は世界に先駆けてZ世代がデジタルネイティブとして活躍する社会の潮流を見据え、その動きをリードするプラットフォームを作り上げることを目標に据えています。

「日本はZ世代がデジタル化を牽引する、世界に先駆けた国となりました。私たちにはその潮流を体現するプロダクトを生み出し、グローバルに展開していく使命があります。」(勝見さん)

そのためにも、アレスグッドは既にアメリカでプロダクトローンチを実施しており、現地のエンジニアチームを採用したり、マーケティング活動を実施したりと、着実に足場を固めつつあります。また、ヨーロッパやアジア主要国への本格展開も視野に入れています。

グローバル市場に向けた製品の改良と現地マーケティングの両輪で、世界的なプレゼンスを高めていく計画です。その過程で人材の確保が最重要課題になると勝見氏は語ります。

「人材が最も大切なリソースです。お金よりも優秀な人材の確保が何より優先されます。」(勝見さん)

現在、アレスグッドには33名の従業員がいますが、そのほとんどがエンジニアという人員構成です。特にUI/UXを含めたプロダクトの高度化が喫緊の課題となっていて、アメリカでの営業・マーケティング強化にも注力しています。

「アメリカの拠点には、現地採用したエンジニアが複数在籍しています。開発は東京とアメリカ現地の両拠点で行い、アメリカ向けのマーケティングは現地主導で展開していく方針です。」(勝見さん)

人材確保が進めば、製品力の向上とブランディング施策の二本柱で、世界展開に向けた体制が整備されていくでしょう。就職活動のデジタル化が一気に進む中、アレスグッドは就活を通じてキャリアに関するさまざまな課題を一気通貫で解決できるプラットフォームを目指します。

「利用者の皆さんから『このサービスがなくては困る』と言われる、価値観に合わせて想起されるサービスを目指しています。起業から2年が経ち、難しさも噛み締めています。しかし可能性はまだ無限に広がっていると実感しています。」(勝見さん)

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