MonthlyPitch登壇者が占う、2024年のテックトレンド <B向け技術スタートアップ起業家編>
MonthlyPitchでは、2023年のピッチイベントに登壇いただいた起業家7人皆さんに、2024年のトレンド予想をしていただきました。
皆さんそれぞれの専門領域にどのような影響があるのか、世界のスタートアップシーンはどこへ向かうのか。新進気鋭の起業家の皆さんならではの視点を楽しんでいただければ幸いです。
「生成AIチューニングのために、データの重要性が再認識される」FastLabel 代表取締役CEO 上田英介氏
── 御社の事業内容を教えてください。
FastLabelはパーパスに「AIインフラを創造し、日本を再び『世界レベル』へ」を掲げ、AIデータプラットフォーム「FastLabel」を提供しています。「FastLabel」はデータ収集から教師データの作成、モデル学習、評価、運用後のチューニング(MLOps構築)まで、一気通貫で実行可能です。
2021年10月の正式リリース以降、累計アノテーション数は3200万件を突破、ユーザー数は6700人を超えました。
今後の展望としては、生成AI領域へのサービスラインアップを拡大し、AIデータアノテーション領域で、国内売上シェアNo.1を目指しています。
── 2024年に波がくるスタートアップのテックトレンドを教えてください。
生成AIのコモディティ化に伴い、2つのトレンドが発生すると予想しています。
1つめは、企業が保有するデータの重要性が再認識されることです。2023年は各企業が生成AIのユースケースを模索し、一部の企業で自社サービスや業務に導入されました。一方で、多くの企業が汎用的な生成AIの限界を認識し、ユースケースや保有するデータによるチューニングが不可欠だと実感したと思います。そのため、あらためて企業が保有するデータの価値が高まると予想しています。
2つめのトレンドは、生成AIの開発コスト削減と安全性向上のニーズが高まることです。なぜなら企業のAI開発が試験段階(PoC)から、本格的な運用段階に移行していくためです。企業はAIを用いて継続的な価値提供をするため、開発コストの削減と倫理・セキュリティ的な観点からの安全性の向上を求めるようになると予想しています。
── 挙げていただいたトレンドにより、どんな社会の変化が起こるか。また、どのような人やスキルが重視されるようになるかを教えてください。
社会の変化としては、企業が生成AIを活用して、より便利で革新的な製品やサービスを開発・提供しはじめると思います。
そのためAI技術の研究開発だけでなく、AIシステムの運用・維持管理に強いスキルを持つ機械学習エンジニアやMLOps領域のエキスパート、データ蓄積による継続的な精度向上を実現するAIデータ活用人材の需要が増えると考えています。
「国内で資金調達後、海外に展開するスタートアップが増える」Flatt Security 代表取締役CEO 井手康貴氏
── 御社の事業内容を教えてください。
プロダクトセキュリティを軸に「セキュリティ診断(脆弱性診断)」などのプロフェッショナルサービス事業と「Shisho Cloud(シショウクラウド)」などのセキュリティプロダクト事業の2軸で事業を展開しています。
セキュリティ診断では、ビジネス上のリスクが大きい脆弱性を発見することにフォーカスした「リスクフォーカス型プラン」を提供しています。お手頃価格で高品質な診断メニューです。提供サービスの高付加価値化や業務効率化が、事業成長・他社との差別化に好影響をもたらしており、直近1年半でエンジニア単価(エンジニア1人あたりの1か月の売上)は、約3倍に成長しました。
Flatt Securityが内製開発し提供している「Shisho Cloud」は、Google CloudやAWSなどのクラウドセキュリティ診断を、誰でも簡単に実施できるサービスです。リリースまでにユーザー企業100社以上にヒアリングを実施し、ニーズを的確に把握しました。その結果、セキュリティ製品にありがちな導入したものの運用できていない状態を避けられる「誰でも運用できて社内のセキュリティ強度向上につながる」プロダクトを実現しています。
── 2024年に波がくるスタートアップのテックトレンドを教えてください。
日本のスタートアップ業界では、国内で大きな資金調達を実施し、海外にチャレンジするスタートアップが増えると予想しています。アメリカで金利上昇によりリスクマネーが減少する一方、日本は金融緩和と低金利が維持され資金調達しやすい環境であるためです。
技術面では2023年に続いてLLMの社会実装が進み、過去のスマホやクラウドサービスの普及と同レベルに大きな、競争環境の変化が発生するでしょう。これまでスタートアップ業界にはさまざまなバズワードが存在しましたが、LLMに対しては「この流れに乗れないと一気に競争力を失う」レベルの高い危機感を抱いています。
── 挙げていただいたトレンドにより、どんな社会の変化が起こるか。また、どのような人やスキルが重視されるようになるかを教えてください。
社会の変化としては、投資のための資金調達ができるスタートアップに、追い風が吹くと予想しています。根拠は2つあります。1つめは物価上昇により先行投資の重要度が増し、チャレンジすることが競争において重要になってきているためです。2つめは、金利上昇により資金調達の環境が厳しくなる可能性があるためです。
こうした社会変化に伴い、人とスキルの面で3つの変化が起こると予想しています。1つめは周囲を巻き込み積極的にチャレンジできる人の市場価値が高まること。2つめはLLM技術を使いこなせるかどうかで、市場価値の格差が広がること。3つめは知的労働において、情報や知識の収集力に加え、それらを構造化できる思考力が重視されるようになることです。
「高い専門性を活かして積極的にチャレンジしていきたい人」は、ぜひFlatt Securityの各部門の採用情報にご注目ください。